遺言の普通方式は、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3通りですが、普通方式のなかで一般的に使われているのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言は、文字通り、遺言者本人の手で書く遺言です。ほとんど費用もかからず、ひとりで手軽に作成できる反面、形式に不備があると遺言そのものが無効になってしまいますので注意が必要です。おおむね下記の手順で作成しますが、手順の(1)と(2)は公正証書遺言と同じです。
(1)相続人の調査(公正証書遺言と同じ) |
(2)財産の調査(公正証書遺言と同じ) |
誰にどの財産を相続させるかを決めるためには、財産としていま何があるかを調査する必要があります。また、財産の総額がわからなければ遺留分の対策も立てられません。
不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)などを収集し正確な権利関係を調査します。
調査した財産を、土地・建物・現預貯金・金融資産・その他財産などに分類して、財産リストとして整理しておきます。あわせて、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債)も洗い出します。
(3)遺言原案の作成 |
誰に、何を、どれだけ相続させるのか、など、遺言の内容を考えて原案を作成します。
原案の段階から形式に不備がないか注意して作成し、内容に不安がある場合は専門家に確認してもらうなど、無効にならないように注意が必要です。
また、もめないために下記のポイントを盛り込むことをおすすめします。
<ポイント>
- 特定の相続財産以外の財産についても誰に相続させるかを決めます。
- 墓地や仏壇を相続管理し、供養などを行う人を「祭祀(さいし)を主宰すべき者」と呼びますが、これも誰に任せるかを決めます。
- 葬儀・埋葬について要望があれば明記しておきます。特殊な方式を希望する場合は生前に協議しておく必要があります(献体、散骨、葬儀を行わない等)。
- 遺言をするにいたった動機・心情を明示(付言)します。
- 遺言を確実に実行してもらえるように遺言執行者を指定します。
(4)遺言書の作成 |
遺言書に使う用紙や筆記具についての決まりはありませんが、用紙は破れにくい丈夫なもの、筆記具は改ざん・劣化し易い鉛筆は止めてボールペン・万年筆・筆などを使用します。
作成した遺言原案をもとに遺言書を作成します。法的に無効にならないよう次の4点を守って作成します。
- 全文を自分で書く
自筆証書遺言は全文を遺言者本人が手書きしなければなりません。パソコンで作成したり代筆してもらったものは署名が自筆であっても無効となります。書き方は縦書き・横書きのどちらでも問題ありません。遺言であることを示すためにきちんと「遺言書」とタイトルを書くことも大切です。 - 正確な日付を書く
遺言書は最新の日付のものが優先されます。年月日が特定できるように遺言書を作成した日付を書きます。同じ日に複数の遺言書を作成した場合は、どれが最新かが問題になりますので、不要なものは破棄してください。また、存在しない日付(2月30日など)やあいまいな日付(3月吉日など)は無効になりますので注意が必要です。あと、遺言者の遺言能力が問題になったときの判断基準日となりますので、正確な日付を書くことが重要です。 - 氏名を自分で書く
本文と日付を書いた後に署名をします。氏名は本人が特定できれば氏または名だけ、ペンネームでも可とされていますが、あえて問題にする必要もないので戸籍通りにきちんと書いてください。なお、夫婦で一緒に署名するなど、共同遺言は無効です。夫婦でも別々に作成しなければいけません。 - 印を押す
最後に印鑑を押します。認印でもかまいませんが、本人の印鑑であることを証明できる実印が望ましいです。印影が欠けたり薄れたりしないように注意して押してください。
(5)遺言書の封印 |
遺言書が完成したら封筒に入れて、遺言書に押したものと同じ印鑑を使用して封印します。そのままでも法的には問題ありませんが、改ざんなどを防ぐために封印することをおすすめします。
次に、誤って捨てられないように封筒の表に「遺言書」と書き、家庭裁判所の検認手続きを受けないと遺言の執行ができないため、裏右側には「本遺言書は私の死後、開封せずにすみやかに家庭裁判所に提出し、検認を受けてください。」と注意書きをしておきます。そのうえで裏左側に日付と署名をして保管します。
(6)遺言書の保管 |
遺言書を入れた封筒の保管場所は自分で考えなければいけません。自分の死後すぐに発見されないと遺言書を作った意味がありませんので、遺族が発見しやすい場所に保管することが重要です。
そのためには遺言書を作ったことを配偶者など信頼できる人に知らせておき、その人に預けておくか保管場所を伝えておくことが一般的だと思います。
信頼できる第三者に預ける場合には、自分の死をすぐに知り得る状態にしておくことが必要です。
公正証書遺言は、公証人によって作成され、その原本は公証役場に保管されますので、もっとも確実で安全な遺言の方式です。おおむね下記の手順で作成しますが、手順の(1)と(2)は自筆証書遺言と同じです。
(1)相続人の調査(自筆証書遺言と同じ) |
まず最初に誰が相続人になるのかを調査します。
遺言書を残さずに死亡した場合、誰が相続人になるのかを法律で定めています。この法律に定めた相続人を法定相続人といい、原則として法定相続分の割合で財産を相続することになります。
相続人は誰で、それぞれの相続人にはどのような割合で財産が相続されるのかを把握したうえで、遺留分などを考慮して遺言書を作成する必要があります。
遺言者と相続人の関係性を証明するために戸籍謄本や住民票などを取得します。
(2)財産の調査(自筆証書遺言と同じ) |
誰にどの財産を相続させるかを決めるためには、財産としていま何があるかを調査する必要があります。また、財産の総額がわからなければ遺留分の対策も立てられません。
不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)などを収集し正確な権利関係を調査します。
調査した財産を、土地・建物・現預貯金・金融資産・その他財産などに分類して、財産リストとして整理しておきます。あわせて、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債)も洗い出します。
(3)遺言原案の作成 |
誰に、何を、どれだけ相続させるのか、など、遺言の内容を考えて原案を作成します。
自筆証書遺言は形式に不備がないように注意しなければなりませんが、公正証書遺言は公証人が法律的な表現に修正してくれますので厳密なものでなくても問題ありません。
また、もめないために下記のポイントを盛り込むことをおすすめします。
<ポイント>
- 特定の相続財産以外の財産についても誰に相続させるかを決めます。
- 墓地や仏壇を相続管理し、供養などを行う人を「祭祀(さいし)を主宰すべき者」と呼びますが、これも誰に任せるかを決めます。
- 葬儀・埋葬について要望があれば明記しておきます。特殊な方式を希望する場合は生前に協議しておく必要があります(献体、散骨、葬儀を行わない等)。
- 遺言をするにいたった動機・心情を明示(付言)します。
- 遺言を確実に実行してもらえるように遺言執行者を指定します。
(4)証人2名の選任と依頼 |
公正証書作成のときに立会ってもらう証人が2名必要です。
証人の住所、氏名、生年月日、職業をメモします。なお、住所・氏名については住民票を取り寄せてもらい、正確な記述を確認してください。
<証人になれない人>
- 未成年者
- 推定相続人、受遺者、これらの配偶者および直系血族
- 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人
(5)公証人との事前打ち合わせ |
事前に最寄りの公証役場に電話をして、遺言公正証書作成のための相談したいと連絡し、打ち合わせ日時を予約します。
公証人に遺言内容を説明し表現方法などについて検討後、今後の打ち合わせ日時や公正証書の作成日を決めます。打ち合わせは毎回公証役場に行かなくてもよく、ファックスや郵便でやりとりすることも可能です。
なお、遺言内容の原稿と資料は公証人へ預けることになりますので、必要な書類についてはコピーしておく必要があります。
また、作成を依頼した場合は、後日、電話で公証人への手数料を確認しておきます。
<必要な書類>
- 遺言者本人の印鑑証明書
- 遺言者と相続人の関係が証明できる戸籍謄本・除籍謄本
- 相続人以外の人に遺贈する場合はその人の住民票
- 財産に不動産がある場合は登記簿謄本(登記事項証明書)と固定資産評価証明書
- 証人2名の住所、氏名、生年月日、職業を書いたメモ
- その他、公証人から指定されたもの
(6)証人への連絡 |
証人2名へ作成日時や持参品(認印)、そして公証役場の所在地と電話番号を連絡します。
証人への謝礼についても了解を得ておきます。
(7)公正証書遺言の作成 |